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2012年9月 5日 (水)

マスタリング メモ

今、ペガサスというデュオのマスタリング中なのですが、マスタリングのみで関わるというのは中々ない事でして、個人的にはマスタリングというのはミックスとは使う脳みそが違うというか、それ専門のエンジニアやスタジオがある事からもわかる様に、ミックス出来るからマスタリングも出来るでしょ?みたいに思われがちだが違うのよ?と思う次第でして。
であるからに毎回頭を悩ませるところなんですが、そこをクリアする為にミックスをする時にはマスタリングでは微調整で済む様にやってるんです。
が、まさかマスタリングだけ依頼されるとは思いも寄らない事でした(笑)
弱点克服の意味合いも込めて今回受けてみた訳ですが、いざ作業に入ると「さてどうやってたっけか?」なんてなってしまうので、ざっと作業内容をメモっておこうかと思いまして今回のエントリー。凄く長文です。

以下続きます。

まずはミックスの終わったデータを取り込む訳ですが、マスタリングでも音作りはProToolsで行うのでProToolsへ取り込むのですが、この際もらうデータ(自分でミックスまでしたデータでも同じ)のレートですが、ファイルでの場合は、録音した時のままでもらいます。録音時が24bit/44.1KHzならば24bit/44.1KHzのまま、16bitなら16bit、という具合にとにかく録音時のまま変換無しでというのが大前提。これは変換のクオリティが録音した機器に準じてしまうからで余計な味付けが施されて欲しく無いからです。変換はこちらでやるので…って意味合いもありますが、受け取る段階で誤差が生じて欲しく無いからです。ファイルでの場合はこうですが、ファイルでの受け取りが無理な場合は(録音をHDMTRとかでやってる場合ではあり得ます)CD-Rでもらうのですが、こういう場合は仕方ないですので16/44.1ですね。

で、ProToolsへ取り込むんですが、この際に最近ProToolsを10にアップした理由でもあるんですが、サンプリングレートはそのままで、ビットレートだけ32bitに変換して取り込みます。これは演算が浮動小数点演算だから歪に強いというのと、レートを上げた方がエフェクト(プラグインですが)のノリがいいからですね。サンプリングレートは録音した状態のものから上げてもあまり意味が無いのと、メリットよりデメリットの方が大きいからそのままです。44.1なり48なりです。さすがに96のはまだ受けた事ないです。来たらうちのシステムでは厳しいなぁ…


ProToolsに取り込み後は音作りと音圧調整などをします。具体的にアサインしていくプラグインですが…


1.EQ(MSでかけられるもの)

2.マルチバンドコンプ

3.マキシマイザー(#1)

4.味付け用のコンプ(真空管とか味の濃いもの)

5.マキシマイザー(#2)

という順番が基本です。稀に3と4の間にEQやMSのレベルを調整出来るものや、テープシミュレーターなどが入る事もあります。これが各曲のトラックにインサートするもので、これらすべての曲が通るバス(というか、PTの場合はマスターフェーダーですね)に全曲共通の味付けとして(つまりアルバムないしEPないしのトータルの色決め)マキシマイザーないしマルチバンドコンプなどをさしますが、ここは音量を上げたりはしません。スレッシェルドもほぼゼロのままでアウトの音量だけを-0.3dBにします。マルチバンドを使うのはEQ的な使い方をするからですが、これもほとんどいじりません。

作業の順番はインサートした順ではなく、3のマキシマイザーからやって行きます。アウトのレベルを-1dBにしたのち(-1dBにするのは、このマキシマイザーの後ろのプラグインによってピークが出てしまわない様に余裕をもたせる為と、一つのプラグインだけで音量を上げていくと、限界がくるのが早いので、少しづつ処理を分けた方が結果が良いから)スレッシェルドを最終的に「このぐらい欲しい」という音量が出るくらいまでドバッと下げて行きます。大抵はこれで歪みやポンピングを起こすのですが、この段階では気にしない。


次に1のEQで、3のマキシマイザーで歪んだりポンピングしたりする部分をカットします。つまりマキシマイザーに引っかかるのを前段で防ぐわけです。ここでMSのEQを使うのはこのカットする部分が繊細に決められるからで、ポンピングの原因がセンターのスネアにあるが、そこを切ると左右のギターまで引っ込んでしまう…というのを避けられるからです。
さらには、プラグインにもよりますが、ここで左右のステレオのワイド感、所謂ステレオイメージも調整したりします。
無論、逆に音的に足りない部分などはブーストする事もありますが、ブーストは精々1dBぐらいまでです。基本はピークのカットとステレオイメージ調整です。


次に2のマルチバンドコンプですが、1のEQで下げただけだと、イメージが変わってしまうのと(イメージが変わるほどEQする事は稀ですが)まだマキシマイザーでのポンピングが防げるほどにはならないので、コンプで各周波数体のスピード感を調整します。
このスピード感はアタックとリリースの具合で決めていくんですが、今は周波数によって大体決まった個人的雛形があります。
因みにこのコンプのアウトも-1dBにしています。これもここだけでの味付けが出過ぎない様に…というのもありますが、大体気持ちいい感じにしていくと1dBぐらい飛び出す事が多いので、初めっから下げておくというだけなんですが。
もう一つマルチバンドコンプを使う理由として、EQ的な使い方が出来るからというのもあります。アナライザーなんかで確認するとわかるんですが、マキシマイザーだけで無理矢理音圧上げたものなんかにありがちですが、下から上までレベルがビッシリ入ってる音源なんかを見かけますが、確かに迫力ある様には聴こえますがこういう音源て長時間聴いてらんないんです。耳がつかれまくって。大体自然に聴いてる音って低域から高域に向かってなだらかに下がってるものなんで、マルチバンドコンプの各周波数体のレベルも右肩下がりにします。で音圧的なものはアタックのスピード感やリリースの具合や、スレッシェルド(つまりコンプの引っかかるタイミング)なんかで調整します。それでも飛び出てくるピークは前段のEQで切ると。


次に5のマキシマイザー(#2)で最終的にアウトのレベルを決めるのですが、前途の通り、マスターでのアルバム全体の質感決めのプラグインがあるので、ここでのアウトのレベルは-0.5dBにしてます。スレッシェルドは0~-0.5dbぐらいです本当にピークを決める程度。
でここまで来てまだポンピングしまくる様な場合や、このマキシマイザー(#2)に引っかかりすぎる場合には、3のマキシマイザー(#1)のスレッシェルドを上げて行きます(0dB方向にするという事)それによってちょっと音圧感は下がりますので、その辺を1ないし2のプラグインで再調整します(カットするレベルを減らしたり、マルチバンドの各周波数体のアウトを上げたり)


5のマキシマイザーの段階で逆に小さすぎたりしてもうちょい上げたい、ないし一つまみ欲しいなんて場合に、4の味付けコンプを挟みます。個人的には大抵挟んでます。で、ここでのアウトに余裕を持たせる意味でも前段のマキシマイザー(#1)のアウトが-1dBなのですね。なのでここのコンプのアウトは1dB以内に収める様にしております。

こんな流れなのですが、ここまで来てさらにピークを切りたかったりする事があるのですが、そういった場合には3のマキシマイザー(#1)の次に刺します。なのでルーティング的にも初めから3と4の間は一つ開けております。ルーティングというと1のEQの前も一つあけてるので

空→EQ→空→マルチバンドコンプ→マキシマイザー(#1)→空→味付けコンプ(刺さない場合もあるので初めはここも空)→マキシマイザー(#2)

ですね。
因みにこのピーク切るのには普通のEQであったりMSのバランスをいじれる何か(レベル調整出来ればなんでも良い)であったりが多いです。さらに、1と2の間を開ける様になってますが、これは今回からでして、全体的に低域があまり入っていない音源だったので、低域調整がEQだけでは限界があった為です。具体的にはサブハーモニック的な、低域を抽出ないし作る類のものですね。

1のEQの前も一つ開けておりますがここは音源の音量がそもそも小さすぎたり、逆に大きすぎたりする場合にトリムなどで調整する場合があるからです。小さすぎるのは稀ですが、大きすぎて初めに手をつける段階で何も出来ないものなど(音圧を上げたりする必要はないがちょこっとEQしたい場合とか)はここでちょっと下げておく必要があるからです。たとえカット方向にしかEQをしない、という場合でも0dBに張り付いたファイルなどはピークこえちゃいますからね。しかしこれは24bitで作業してた時の名残でして浮動小数点演算では、ピークランプをあまり躍起になって気にする必要もないという話もありますが…この辺は今後、要検証ですね。

で最終段、マスターで最後のコンプないしマキシマイザーを通るんですが、ここのスレッシェルドは-0.5dB。これは各トラックの出口と同じにするだけです。で、最後のアウトレベルは-0.3db。0dBにしないのは、再生機器によって0dBの扱いが違う為で、0だと環境によっては歪んでしまう事がある為です。


でマスターのアウトをバス送りにしつつ、PT内で別トラックに録音してファイルを作ります。バウンスはしない。音が変わる気がするんですよね~ProToolsのバウンス。なので別トラックへの録音なんですが、録音したファイルを⌘+K(Macの場合)でファイルとしてエクスポートします(レートは取り込み時変換したまま。つまり32bitのままです)

このファイルをPQうち出来る波形編集ソフトに読み込み、頭とお尻にフェイドを書き込み、PQコードを打ちつつ、曲間を決めて、最後にディザをかけて16bit 44.1KHzにしつつCD-Rに焼きマスターメディアを作成して終了です。
CD-Rになるまで32bitのまま…というわけです。これのメリットは音決めに関わるほぼすべての作業を歪みを気にせず出来るという事。(32bit浮動小数点は歪みに強いという…単純にわかりやすく言うとそういう事ですかね?)
デメリットはディザによる変化がCD-Rになるまで確認出来ないという事。これ、ここでガラッと変わる様ではその前の段階に問題があると思うので、そんなに気にしてませんが。むしろPQうちの段階でのフェイドや、曲間の取り方によるノイズの方が問題かな?と。これはPTの段階で処理をしても場合によっては発生するんで(したし…最近も 笑)そっちの方が厄介ですが、最近マスタリングソフトを本格的に乗り換え中でして、こちらが凄く良いのでこの問題もクリアできそうです。まだまだ使い慣れないのですが…


以上、ほぼ個人的マスタリング方法のメモでしたが、参考になったりする人がいたら幸いです。

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